東京都では地球温暖化対策として大規模事業所に対し「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が2010(平成22)年4月からスタートしました。霞が関ビルディングとテナントのみなさまにもかかわりのあるこの制度について、東京都環境局でお話しをうかがいました。
東京都では「2020年までに東京の温室効果ガス排出量を2000年比で25%削減する」という目標を掲げ、現在その目標の達成のため、全庁を挙げて温暖化対策に取り組んでいます。都の部門別のCO2排出量は左下のグラフの通りで、部門ごとそれぞれに温暖化対策を進めています。「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」の対象となるのは、業務・産業部門のCO2排出量の約4割を占める大規模事業所です。大規模事業所とは、東京都内にある前年度の燃料、熱及び電気の使用量が、原油換算で1,500Kℓ以上のオフィスビルや公共施設、工場などの建物・施設を指します。該当する事業所はCO2総量の削減が義務づけられます。
対象となる事業所には、基準排出量から8%※の削減義務が求められます。基準排出量とは、2002~07年度までの間の連続する3か年度の平均値で、事業者が任意で選択できます。先程申し上げた「25%削減」を達成するには、業務・産業部門より17%のCO2排出量削減が必要と試算しています。ただ、すぐに17%削減は難しいので、2010-14年を第1計画期間とし、「大幅削減に向けた転換始動期」と位置づけ、8%削減が義務率となりました。削減義務が果たせなかった事業所は、未達部分を排出量取引によって履行することができます。自主的な削減ができず、排出量取引によっても未達成分の排出枠を購入できなかった事業者に対しては、罰金や違反事実の公表などの罰則もあります。
※オフィスビル等のうち、地域冷暖房等を多く利用している事業所及び工場等は6%
東京都ではこれまでも、大規模事業所に対して2000年に「地球温暖化対策計画書制度」を創設し、温室効果ガス排出量の報告や自主的な削減目標の策定を求めてきました。ただ、あくまで自主的なもので、約8割の取り組みが標準レベルに留まっていました。今後、将来の気候変動によるリスクを減らすために、これまでの「計画的な実施を求める」制度から、「削減結果を求める」制度へ強化する必要があったのです。また、今まで省エネは現場レベルでの地道な取り組みになりがちでしたが、新制度の導入をきっかけに経営全体の問題として取り組んでいただき、総量削減コストを明確な経営経費として捉えていただきたいと考えています。東京都が温室効果ガスの排出総量の削減を率先して行うことで、低炭素社会をいち早く実現し、新たな都市モデルとして世界に発信する。これは大きな意義があることだと思います。
当制度の対象となる約1,300の大規模事業所の中には、多くのテナントビルが含まれています。左のグラフのようにビル全体のエネルギー消費量の約6割をテナント事業者が占める場合もあります。ですから、効果的な温暖化対策のためには、ビルとテナント事業者双方の取り組みが欠かせません。新制度では、CO2削減の義務を負うのはビルオーナーを基本とし、そのうえですべてのテナント事業者にオーナーの削減対策に協力する義務があります。たとえば、エネルギー使用量の確認や社員への省エネ啓発などの取り組みも必要でしょう。さらに一定規模以上のテナント事業者は、「特定テナント等事業者」として扱われ、独自の省エネ・省CO2対策の計画書を作成・提出する義務も追加されます。
ビル側とテナント側がCO2排出総量の削減・義務の達成に向けた協力体制をつくっていくことが必要です。ビルとテナントはもちろん、テナントもお互いの情報を交換し合い、現状を把握し、意識を共有する。そうしてどのようなことが必要なのか考えていくと、運用レベルでやれることはまだまだあります。テナントビルでいえば、個人のパソコンなどOA機器です。たとえば、年末年始など休日が連続する場合、パソコンの電源がつながったままになっているのはムダですよね。都でも具体的にどのような取り組みを行えばよいか、点検表(共通シート)を作成し、項目によってはどの程度のCO2削減効果が見込めるか数値で表しています。温暖化対策にはオフィスで働く一人ひとりの役割も決して小さくないのです。
当制度の骨子ができあがってから40回以上のセミナーや説明会を行い、何万という方にご参加いただきました。そこでは非常に前向きに取り組んで行こうという姿勢が見られ、とても心強く思っています。東京都では引き続きこの制度に関する説明会を開催したり、対象事業所へのヘルプデスクの開設、質問シートの受付を行っています。
詳しくは下記のホームページをご覧ください。
■東京都環境局
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
■排出総量削減義務と排出量取引制度
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw/
東京都環境局 都市地球環境部 総量削減課
TEL 03-5388-3438
※記載のない図・表はすべて東京都環境局配布資料をもとに作成しました。